まるでドキュメンタリー。すべてがその場で起こっている出来事のような映画
この映画はですね、すごくリアルでした。音楽も少なくて、カメラワークがまるでドキュメンタリー映画なのです。現実離れした無駄な描写がほとんどなくて、まるで今起こっている現実をその場で撮っているような感じ。内容も、「人間の怒りや悲しみってそうかも、そんな感じだよねきっと・・・」とリアルに胸に迫ってくる。
映画って「面白いけど、それは現実にはあまりないな~」という部分も多かったりするけど、この映画は場面のひとつひとつが現実的。それは、娘を殺された母が犯人に「生きていてほしい」とい願うにいたったという、単にここだけ聞くと共感しにくい話であっても、なのです。
「そんなことあるわけない」、が、「そんなこともあるかもしれない」に変わるのです。人間の心の奥深さを味わうことができる映画でした。
「許す、許さない」は、死刑を望む、望まない、と直結しない
犯人を許したから死刑はナシで、犯人を許せないから死刑で。
この図式を信じて疑わなかった私に、この映画は大きな問いを突き付けてきました。許す、許さない。それがその対象の死を願う、願わないに直結しないのです。よくよく考えるとそうですよね。許せないから生き地獄を味わえ、ということもあるのだし。
でもこの映画は、娘を殺された母が「犯人に生き地獄を味わってほしいから」死刑を望まなかった、ということでもないのです。この部分の話は観てのお楽しみというか、この映画の一番の考えどころ、見どころだと思います。
被害者の父の心理も見どころです。
母のせつなさは、被害者も加害者も同じ
せつなかったです。悲しかったです。子どもを失う親の心が本当に。なによりの生き地獄はこれだと思うのです。この映画のこの部分は、強く心に残りました。