須々木ユミの「これを観よう!」

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私が大好きな作家、沼田まほかる原作のサスペンス<『ユリゴコロ』が映画になっていました>

 

ユリゴコロ

まずは小説がすごい!沼田まほかる原作の映画『ユリゴコロ

沼田まほかる!この人の小説はすべて読みました.。重い!怖い!そして描写が素晴らしい!根っこのほうが結構暗い私にピッタリはまる文体で、彼女の「猫鳴り」を読んでからすっかり彼女の小説にはまってしまい、この「ユリゴコロ」「彼女がその名を知らない鳥たち」「アミダサマ」「九月が永遠に続けば」「痺れる」・・・と、読みつくしました。そしてもう、彼女の小説はこれきりです。残念です。また書いてほしい・・・。

 

そして彼女の小説の中でも、特にこの「ユリゴコロ」は私の心に衝撃を与えたのでした。あるとき一人の青年が、自宅の押し入れから見つけたノート、そこに書かれていたのは「殺人鬼の告白」だった・・・なのです。もう、この設定だけで、サスペンス好きは血沸き肉躍る、ではないですか?(使い方間違ってるかも)

 キャスティングもいい!松山ケンイチ吉高由里子松坂桃李

とまあ、小説の話はここまでにして、この映画です。俳優は松山ケンイチ吉高由里子松坂桃李、となかなかのキャスティング。松山ケンイチって、とてもいい俳優ですよね。朴訥としていてヘンな派手さがなく、人間としての奥深さややさしさを内包しているような雰囲気。もし彼が自分の彼氏だったら、ぜったいにその生涯を一生見守ってあげたいと思わせる特別唯一無二感。そいういうものを演技で醸し出せる俳優です。きっともともと魅力のある男性ですよね。その松山ケンイチが、先に話した青年の父、洋介です。

 

そして、ノートに詳細な殺人の告白をのこしていたのが、その父の奥さん、つまり青年の母親、美紗子です。演じているのは吉高由里子なのですが、まあ~この吉高由里子のキレイなこと。その透明感、魅力のある声やしゃべり方。こんなに美しい女性が、その内に秘めた、常人にはとうてい想像力の及ばない衝動によって殺人を犯すということが恐ろしく、それがゆえに惹きつけられるのです。

 

この雰囲気、キャスティングは沼田まほかるが文章で表現したその空気感を再現できているのではなかなと思います。そして先に書いた青年、すなわち二人の子ども役、亮介が松坂桃李くんです。私は彼も好きなのです。なんかいいのです。桃李くんは。シンケンジャーのときから好きでした。完璧すぎないお顔には愛嬌があって、すごく親しみやすくもあるのに怖い役もけっこうはまる。(映画のMOZU、怖かったですよ彼)いい俳優さんです。

 『ユリゴコロ』の意味は

さて、映画では小説と同じく、よくわからないけれどなんだか惹きつけられる美紗子の殺人の動機とその実行にドキドキします。「ユリゴコロ」というのは、言葉を発することができなかった子ども時代の美紗子を医者が診断した際、彼が彼女の母親に言った言葉を美紗子自身が聴き取ったものです。医者は本当は、彼女に心の「よりどころ」がないから・・・と言ったのですが、彼女の耳には「ユリゴコロ」と聞こえ、美紗子は自分の中の足りない何か、を「ユリゴコロ」だと解釈。そして子ども時代、同級生が目の前で溺死するのを見て、自分にとっての「ユリゴコロ」は人の死によって満みたされるものなのだと彼女は思います。以来、ことあるごとに彼女の思考にはユリゴコロというワードが出てくるのですが、その後、この「ユリゴコロ」を満たすものが必ずしも殺人によって得られる興奮だけではないことに気づいていく・・・のです。それにしてもこの聞き間違いがこの話になんともいえないほの暗さを与えているなあと思います。

沼田まほかるの小説を読んでほしいです 

ということで、あとは観ていただければ、と思います。この映画はとても良かったのですが、実は『ユリゴコロ』は原作である小説がかなりおすすめです。沼田まほかるの書く小説はずっしりと重くて読み応えがあります。遅咲きの小説家だったから、ということもあるかもしれないのですが、その作品のひとつひとつに命を懸けているがゆえに、多くの作品を作り出すことができない人なのでは、というような気がしています。

ユリゴコロ (双葉文庫)

ユリゴコロ (双葉文庫)